前代未聞の復活劇!はやぶさ2は羽ばたいた!

2014年12月- 小惑星1999 JU3「リュウグウ」を目指し、 「はやぶさ2」は地球を旅たちました。 幾度にも亙り計画そのものが消滅の危機を迎えながらも、 盛り上がる世論の後押しによってその名に相応しく不死鳥の如く蘇り、 見事宇宙へ羽ばたいたその様は、これ迄に各所で散々語り尽くされて居り、 今更ここで説明するまでも必要も無いでしょう。 これは恐らく世界的に見ても殆ど前例の無い事で、 我が国宇宙開発史に燦然と輝く実績であって、 大いに誇って良いと思います。

本頁もまた、随分長い事放置して居りましたが、 決して関心が無くなった、と言う訳ではありません。 ただ、この一つの宇宙機の冒険譚につき、星の数ほどのファンアートや、複数の劇場映画まで作られる程の世の盛り上がりを見るに付け、 ああ、自分如きの出る幕はもう無いのだな…と、 ある種の安堵感と供に多少のモチベーションの低下があったのも否定は出来ませんが… 然し、我が国の宇宙開発、取分け宇宙科学の現状は、 決して諸手を上げて称賛してばかり居られる物では決してありません。

今、ASTRO-H「ひとみ」の危機に思う

何れかの手段によりこの頁に辿り着かれた様なある種「物好き」(失礼!)な方ならば、 現在我が国のX線天文衛星・ASTRO-H「ひとみ」の置かれている危機的状況については既にご承知の事と思います。 現在、関係者によって懸命の復旧活動が行われて居りますが、 現状、かなり厳しいと思われます。

それらについての詳細は、ISAS/JAXAサイトの当該頁や有志団体「NVS」による定期報告の配信等をご覧頂くとして、 今回の事故を受け思い出すのは…「あかつき」の時もそうだったのですが… その「ひとみ」の祖先、我が国初のX線天文衛星として、輝かしい実績を上げたCORSA-b「はくちょう」の誕生物語です。

この「はくちょう」は、1976年にM-3Cロケットの不具合により打上に失敗したCORSA衛星(軌道に乗らなかった為日本語の愛称名はありません)の代替機として、 メーカー関係者達の情熱・厚意により、 僅か3年後の1979年に打上られたのでしたね。 実に胸の空く思いのするエピソードですが…ふと考えるのです、果たして今、同じ事が出来るだろうか…?と。

無論、「はくちょう」誕生当時は、我が国の宇宙開発は未だ「駆け出し」、 また、時代的にもまだまだ高度成長期の情熱は残っていた頃でしょうから、 プロジェクトもより高度になり、衛星も高価で巨大な物となった現在とでは単純な比較は出来ないでしょう。 当時とはあまりにも状況が変わって仕舞っていますが… 科学衛星年1機体制はとうに崩れ、 Mロケットの後継機たるEロケットは未だ'13年に初号機が打上げられたのみ(本年度打上げ予定あり)、 「のぞみ」は後継プロジェクトの音沙汰の無い内、NASAによって同種の探査機・MAVENが打上られました。 「はやぶさ」に負けずとも劣らぬ危機を乗り越え、現在金星軌道上で観測中の「あかつき」にせよ、 軌道投入までに5年を費やし(まあ、軌道投入再挑戦に関してはこの時間が熟考の為の余裕となった面もあるのかも知れませんが…) 上手く行ったから良かったものの、 もし回復不能な状況に陥っていたとしたら…。 勿論、「ひとみ」については、まだまだ復旧活動が続いて居りますが、当然最悪の事態も覚悟して置かなければならないでしょう。 果たしてその場合…正に「はくちょう」によって我が国のX線天文学が、世界のトップに躍り出た時とは真逆の事態にすらなりかねません。

「空前」の惑星探査機を「絶後」にしない為に…

現在、ロケットによる人工衛星・探査機の打上は、宇宙機関や打上事業者の公式他、 様々なWebサイトでストリーミング配信により視聴する事が出来ます。 公式だけでなく、有志による独自配信等も行われて居ります。 それらを覗いている限り大変盛況で、我が国に於ける宇宙開発への関心も大分高くなって来たのだな、とも感じるのですが、 Webの世界を一歩外へ出てみると、残念ながらまだまだそれ程でもないのだな…と思い知らされます。

商売など正にそうなのですが、世の人々の関心を引くというのはなかなか難しい物、 人の心とは何しろ移り気で、そもそも他人の自由になる物ではありませんからね…。 そんな中、世界に類を見無い「はやぶさ2」の誕生物語は、 一縷の光明を見た思いがしたものです。 が、然し…我々は、この空前の物語を、「絶後」とせず…否、はやぶさ・はやぶさ2の「武勇伝」はこれが最後で結構、 この経験を果たして後の繁栄へと繋げる事が出来るでしょうか。 確か「はやぶさ」のイトカワへのタッチダウンの時でしたか、 今なら「ミニスカ(モーレツ)宇宙海賊」でお馴染みのSF作家・笹本祐一さんが「今を全盛期にしてはいけない」と言う旨の事を語った、 と言う話をジャーナリスト・松浦晋也さんがどこかで書いて居られたのが思い起されます。

果たしてその事の解決となるかは判りませんが、 当方常々思っているのは、 余程の物好でない限り、世の人々の関心が宇宙開発に向かない要因の一つには、 メディア等での「宇宙」の扱いが、少々「夢」や「ロマン」に偏重しすぎているからでは無いか?と言う事です。 確かにそういう側面もあるとは思うのですが、然し「宇宙」は他ならぬ我々自身が今暮らしている場所ではありませんか。 決して「夢物語」で済ませて良い存在では無いと思うのです。

嘗て、アポロ計画に使用された史上最大のロケット、サターンVの開発者として知られるフォン・ブラウン博士が、 ある宇宙センターの来訪者から、サターンロケットの傍らに立つスケール比較用の人形を指して、 「これは何の部品なのか」と尋ねられ、「最も重要な部品・『納税者』です。これが無ければロケットは飛ばせません」 と答えた、と言うエピソードがあります(当方この話の真偽の程はよく知らないのですが…)が、 斯くの如く、最終的に我が国の宇宙開発の行く末を決めるのは、正に我々国民その者なのではありませんか? 「はやぶさ2」がそうであった様に…!

「はやぶさ2」打上より500日の日に

追記:

それにしても、幾らなんでもあまりにも殺風景ですね、このページ… CSSである程度装飾的なスタイル付けを行っては居ますが… 今は中々新たに画像などを用意する暇も気力も無いのですよ…その内もうちょっと何とかしたいですね。